日経サイエンス  2012年12月号

特集:「限界」を科学する

気候変動の果て

K. カルデイラ(カーネギー研究所)

 人類が排出する二酸化炭素などの温室効果ガスによって,地球は急速に温暖化している。気候変動の行き着く先には何が待っているのか。今から約1億年前,恐竜がかっ歩していた白亜紀が参考になる。このままのペースで温暖化ガスの排出が続けば,約1万年後には地球の平均気温は現在より約10℃上昇し,ちょうど白亜紀のような気候になるだろう。そこでは海面は約120m上昇し,今は熱帯にすんでいるワニのような生物が北極海を泳ぎ回っていることだろう。

 そこに行き着くまで,我々人類をはじめとして地球上の生物や生態系は大きな影響を受けることになる。大量の二酸化炭素が溶け込むことによって海洋は酸性化し,これによって海洋生物が貝を作れないといったことも起きる。温暖化が農業生産に与える影響はマイナスばかりでなく,地域によっては収穫増が見込まれる。しかし,それは地球上の格差を広げる方向に作用するだろう。

 

 

再録:別冊日経サイエンス197「激変する気候」

著者

Ken Caldeira

スタンフォード大学内にあるカーネギー研究所の地球生態学部門に所属する気候科学者。気候,炭素,エネルギーシステムに関連した研究をしている。気候・炭素循環のモデルを駆使した研究のほか,海洋の酸性化に関連したフィールドワークに携わっている。

原題名

The Great Climate Experiment(SCIENTIFIC AMERICAN September 2012)

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