日経サイエンス  2012年11月号

特集 コズミックストーム

巨大ブラックホールと生命

C. シャーフ(コロンビア大学)

 一般的に銀河の中心には超大質量ブラックホールが存在し,周囲の物質を吸い込むと同時に,莫大な量のエネルギーを放出している。超大質量ブラックホールの活動は,母銀河に驚くほどの影響を及ぼし得る。活動が激しすぎたり,穏やかすぎたなら,私たちが知っているタイプの生命が居住可能な惑星系は誕生しなかったかもしれない。

 

  天の川銀河の中心に潜むブラックホールは400万太陽質量と,超大質量ブラックホールの中ではかなり“小ぶり”だが,銀河内の物質をほどほどにかき混ぜ,星々を最適な数に保つのに十分な頻度で活動している。天の川銀河は,全宇宙に存在するあまたの銀河の中でも,生命を生み出し得る絶妙のポジションにあるといえる。超大質量ブラックホールと生命のつながりは複雑だが,私たちがこの時代にこの場所で存在していることに,天の川銀河の中心ブラックホールが多大な貢献をしているようだ。

 

 

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再録:別冊日経サイエンス195「空からの脅威」

著者

Caleb Scharf

コロンビア大学宇宙生物学センター長。SCIENTIFIC AMERICANの連載ブログで生命について書いている。また他の出版物にも多く寄稿している。妻と2人の娘とともにニューヨークに在住。

原題名

The Benevolence of Black Holes(SCIENTIFIC AMERICAN August 2012)

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