日経サイエンス  2012年10月号

特集:極地が融ける

グリーンランドに氷上湖出現

S. パーキンズ(サイエンスライター)

 氷に閉ざされたグリーンランド。毎年夏になると日光がほぼ一日中降り注ぐ白夜となる。標高の低いところでは,解け出した水が表面を流れて,濃い青の池や湖を作り出す。これらは普通の湖とは異なり,たまった水が瞬く間にはけて,消えてしまうことがある。

 こうした湖が将来の氷床や海面レベルにどう影響するかを詳しく探るため,科学者が調査した。ウッズホール海洋研究所の地球物理学者ダスによると,湖水が急にはけるときには氷床下の岩盤にまで水が達し,氷床が一時的に滑りやすくなって海へ向かう動きが速まるという。温暖化が続くと,こうした突発的な流出がもっと頻繁に広範囲で起こるかもしれないと科学者たちは懸念している。

 氷上の湖は氷の融解にも寄与しており,湖水下の氷は水をかぶっていない近くの氷に比べて2倍のスピードで薄くなっていると,ニューヨーク市立大学の雪氷学者テデスコはいう。

著者

Sid Perkins

地球科学を専門とするフリーランスのライター。テネシー州クロスビル在住。

原題名

Lakes on Ice(SCIENTIFIC AMERICAN August 2012)

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