日経サイエンス  2012年10月号

特集 マイクロバイオーム

個人差を生むマイクロバイオーム

服部正平(東京大学)

 血縁関係が近かったり,同じ衣食住の環境にあっても,ヒトの体内の細菌叢のパターンは1人ひとり異なる。一卵性双生児の間でも違いがみられる。

 一方で,ヒトの細菌叢の持つ遺伝子を調べると,多くの人が共通した細菌の遺伝子機能を持っていることがわかってきた。細菌の種類は様々であっても,その遺伝子(機能)はほぼ同じである。ヒトは自らに役立つ遺伝子をもとめて細菌を選んできたとみることができる。

 細菌叢の遺伝子をひとまとめにして解析するメタゲノム解析という方法で,こうしたマイクロバイオームの謎が次第に解き明かされてきた。

 腸内細菌など腸管の細菌叢の乱れが,免疫機構を通じて,全身の病気や健康と関係しているという見方が有力になっている。

著者

服部正平(はっとり・まさひら)

東京大学大学院新領域創成科学研究科教授。化学系企業,東大助教授,理化学研究所チーム長,北里大学教授をへて2006年より現職。ヒトゲノム計画(1991〜2004年)に従事し,11番や21番染色体の完全解読などの論文がある。最近は次世代シーケンサーを用いてヒト常在菌叢を中心に様々な環境細菌叢のゲノム科学研究を進めている。

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