日経サイエンス  2012年10月号

特集 マイクロバイオーム

特集:マイクロバイオーム 究極のソーシャルネット

J. アッカーマン(サイエンスライター)

 人体には,自身の細胞の10倍にも及ぶ細菌細胞が存在する。共生細菌や細菌叢,マイクロバイオームなどと呼ばれるこれらの細菌の集団は,複雑な生態系を構築して,私たちの健康に有用な役割を果たしていることがわかってきた。

 この細菌たちは,私たちが自分で作る事ができない栄養素を作ってくれたり,健康を維持する免疫反応をコントロールしてくれたりする。その様子は,究極のソーシャルネットと呼ぶのにふさわしい。

 ところが残念なことに,人間の生活の変化,とりわけ抗生物質の使用によって,こうした有用な微生物が減る傾向にある。その結果,自己免疫疾患や肥満が増加している可能性がある。

 

 

再録:別冊日経サイエンス221「微生物の脅威」

著者

Jennifer Ackerman

受賞歴もあるサイエンスライターで,近著に『かぜの科学 もっとも身近な病の生態』(2011年,早川書房)がある。現在は鳥類の知性に関する本を執筆している。

原題名

The Ultimate Social Network(SCIENTIFIC AMERICAN June 2012)

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