日経サイエンス  2012年10月号

特集:マイクロバイオーム

細菌に満ちた私

日経サイエンス編集部

 人はひとりぼっちでは生きていけない──。社会の相互扶助の話ではない。我々の体内にすむ膨大な数の細菌が,マイクロバイオームというまとまりをなし,ヒトの細胞とやり取りをしながら,私たちの身体の生理機能をコントロールしている。その持ちつ持たれつの様子は,究極のソーシャルネットと呼ぶにふさわしい。

 細菌の持つ遺伝子をひとまとめにして調べるメタゲノム解析という研究手法によって,ヒトのマイクロバイオームの正体が明らかにされようとしている。腸内細菌などの構成パターンは,人によって千差万別で,1人として同じものはない。細菌は我々と一体を成して個性を演出している。

 こうした体内の細菌の状態が,ヒトの健康にとどまらず,心や精神の状態にも影響を与えているらしいこともわかってきた。ヒトと細菌をトータルで捉えるマイクロバイオームの研究は,旧来の人間観を変えつつある。

 

 

究極のソーシャルネット  J.アッカーマン(サイエンスライター)

 

個人差を生むマイクロバイオーム  服部正平(東京大学)

 

胃腸と脳の意外なつながり  M.コンスタンディ(サイエンスライター)

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