日経サイエンス  2012年8月号

生物の色彩マジック

P. ボール(サイエンスライター)

 クジャクの鮮やかな尾羽の色合いはどのように生み出されるのだろう? 調べても,それらしい色素は見当たらず,羽を濡らすと色が消えてしまう。羽は尾根のような微細な隆起に覆われ,この構造によって太陽光の特定波長が選び出されて反射され,目もあやな黄色と緑,青を生み出している。鳥の羽毛のほか,チョウの羽,イカの体の色は幅数百nmの構造が並んだものによって生み出されている場合が多い。近年,こうした生物のナノ構造をまねた材料の開発が進んでいる。動きにつれて色の変わる自動車や衣服,携帯電話などに使う高効率の光デバイス,クレジットカード向けの偽造されにくい認証マークなど,様々な応用が考えられている。

 

 

再録:別冊日経サイエンス227「鳥のサイエンス 知られざる生態の謎を解く」

再録:別冊日経サイエンス210「アートする科学」

著者

Philip Ball

ロンドンを拠点に活動しているサイエンスライター。最新刊「Curiosity: How Science Became Interested in Everything」が3月にBodley Head社から出版された。

原題名

Nature’s Color Tricks(SCIENTIFIC AMERICAN May 2012)

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