
太陽の様子がどうもおかしい。太陽活動は近代の観測史上あまり例のない静穏な状態になりつつある。通常の11年周期に沿った活動の上昇が遅れに遅れ,黒点数や太陽風の強さなどの指標がいずれも弱くなっている。太陽活動が非常に静かだった17世紀のマウンダー極小期と呼ばれる時期は,地球の気候が寒冷だったことがわかっている。このまま,かつてのような静かな太陽になるのか,あるいは再び活動が活発になるのだろうか。
太陽の将来を占うには,太陽活動を支配する磁場の働きを観測するのが有効である。太陽活動の強弱は,内部のダイナモ機構が生み出す磁場に大きく左右される。日本の太陽観測衛星「ひので」による2006年以降の観測によって,それまでよくわかっていなかった太陽の南北の極域磁場の様子が明らかになってきた。
太陽の磁場構造は通常は,両極が逆の磁場を持つ「2極構造」。ところが驚いたことに,この2極構造が崩れ,「4極構造」ともいえる状態になりつつあるらしい。これは一体何を意味するのか。太陽の磁場構造は近代の観測では確認されていない,未知の領域に入り始めているようだ。
著者
常田佐久(つねた・さく)
国立天文台教授。専門は太陽物理学・飛翔体天文学。太陽観測衛星「ひので」搭載の可視光望遠鏡の開発を主導した。「ひので」科学プロジェクト長として観測・研究活動を統括。観測データを用いて,太陽のダイナモ機構・磁場とコロナや彩層加熱,太陽風の加速,磁気コネクションの過程などを研究する。2009年度林忠四郎賞。
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