
足などが麻痺し,主に子供がかかる「小児麻痺(ポリオ)」はウイルス感染で起きる。1988年,ポリオ根絶に向けて世界的規模でのワクチン接種が始まって以来,自然発症数は減り続け,2011年には約650件にまで下がった。だが完全にポリオをなくすには,現在のワクチン計画を変える必要がある。最も広く使用されているワクチンに含まれる成分の1つが,ポリオの予防よりむしろ発症をもたらしているからだ。こうした状況を受け,世界保健機関は5月下旬の総会で,ワクチン成分の変更を承認する見通しだ。ワクチン由来のポリオが減少し,根絶の取り組みも加速するだろう。
(以下併載コラム)
日本は長年,先進国の中で唯一,経口生ワクチンの公的な接種を続けてきたが,このほど仏サノフィパスツールの不活化ワクチンが承認された。厚生労働省は9月から子供への定期接種をこれに切り替える方針だ。それ以降はワクチンのためにポリオを発症する恐れはなくなるが,一方で現在の生ワクチンの接種を避ける“接種控え”が増える恐れが生じている。接種率が下がればポリオ流行のリスクは高まり,かつてなく低い接種率で流行期である夏を迎えることに,専門家からは懸念の声が上がっている。(編集部・笹川綿子)
著者
Helen Branswell
原題名
Polio’s Last Act(SCIENTIFIC AMERICAN April 2012)
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