
試験やスピーチの際,あがってしまって頭が真っ白になった経験は誰しもあるはずだ。最近,そのメカニズムの解明が進んできた。物事がうまく運んでいる時,脳の前頭前野は私たちの浅ましい感情や衝動を抑える制御中枢として働いている。しかし,強い急性ストレスにさらされると,前頭前野の支配力が弱まり,進化的に古い脳領域の支配が強まることがわかった。思考と感情を高度に制御する領域が,視床下部など古くからの脳領域に移ってしまうのだ。そうなると,私たちは身のすくむような不安に駆られたり,普段,抑え込んでいる衝動に負けたりする。こうした知見を踏まえ,冷静さを保つための行動療法や薬剤の開発も行われている。
著者
Amy Arnsten / Carolyn M. Mazure / Rajita Sinha
アーンステンはエール大学医学部の神経生物学教授。ストレスと老化の際の前頭前野における分子レベルの変化についての彼女の研究は,プラゾシンやグアンファシンを使った心的外傷後ストレス障害や注意欠陥多動性障害などの精神疾患の治療につながっている。メイジャーは同大学医学部の精神医学・心理学教授で,副学部長も務める。エール大学学際的女性保健研究センターを立ち上げ,センター長を務めている。シンハは同大学医学部の精神医学の教授で,ストレスが行動に及ぼす影響を研究テーマとする同大学ストレスセンターの所長。
原題名
This Is Your Brain in Meltdown(SCIENTIFIC AMERICAN April 2012)
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