
小さいころ海やプールに行って,水中でどれくらい息を止められるか友達と競争したことがある人がいるかもしれない。息を止められる時間は何によって決まるのだろう? 実はほとんどの場合,体内の酸素が使い果たされるよりもずっと前に,息を吸いたくなる。最も有力な仮説は,横隔膜(収縮して肺を膨らませる)がどのくらい収縮状態を続けているか,そして酸素濃度の低下と二酸化炭素濃度の上昇に対してどう生化学的に反応しているかを伝える信号が,横隔膜から脳に送られているというものだ。脳は最初のうちそれらの信号を不快に感じるだけだが,ついには許容範囲を超えると判断し,強制的に呼吸を再開させるらしい。
著者
Michael J. Parkes
英国のバーミンガム大学スポーツ・運動科学部で応用生理学の上級講師を務めている。また,バーミンガム大学病院NHS財団トラストのウェルカムトラスト臨床研究施設でも働いている。
原題名
The Limits of Breath Holding(SCIENTIFIC AMERICAN April 2012)