日経サイエンス  2012年6月号

サイエンス・イン・ピクチャー

脳を育む胎盤

C. カルブ(科学ジャーナリスト)

 胎盤はユニークな臓器だ。命になくてはならないのに,束の間しか存在しない。胎盤はその短い務めの間,胎児を守る重要な防壁となっている。また,その血管は母体から胎児へ酸素と栄養分を運んでいる〔ジョンズ・ホプキンズ大学医学部の病理学の准教授バーカー(Norman Barker)が撮影したこの画像では,血管が木の根のように写っている〕。それでも,胎盤は過小評価されてきたといえる。胎盤が単なるパイプ以上のものであることが最近の研究でわかった。胎児の保護に積極的な役割を果たしているほか,神経系の発達に関与しているのだ。

 

 

再録:別冊日経サイエンス191 「心の迷宮 脳の神秘を探る」

著者

Claudia Kalb

ワシントンを拠点に活動する科学ジャーナリスト。元Newsweek誌シニアライター。

原題名

Fetal Armor(SCIENTIFIC AMERICAN February 2012)

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