日経サイエンス  2012年6月号

フロントランナー 挑む 第16回

超弦理論で世界の成り立ちを探る:大栗博司

中島林彦(編集部)

 

相対性理論と量子力学を統一する最有力理論と目される「超弦理論」

この超弦理論の9次元世界と実世界の新たな結びつきを発見し

超ミクロのブラックホールにまつわる難問を解き明かした

 

 万物の理論の最有力候補と目される超弦理論(超ひも理論)で世界をリードする研究者の1人,大栗博司。「宇宙は言ってみれば,この人形のようなもの」といいながら,かわいらしいマトリョーシカ人形を取りだした。人形を胴のところで上下に分割すると,一回り小さい人形が姿を現し,その人形を割ると,もう一回り小さな人形が出てくる(右の写真)。

 

 この入れ子構造は原子の中に原子核,原子核の中に核子(陽子と中性子),核子の中にクォークという自然界の階層性を想起させる。手のひら大ほどあった人形は最後には小指の先くらいになった。「ではこの中に何があるのでしょう?」と,にっこりしながらその小さな人形を割ってみると……。輪ゴムが出てきた!
(文中敬称略)

 

 

再録:別冊日経サイエンス186 「実在とは何か?」

再録:「フロントランナー 挑戦する科学者」

大栗 博司( おおぐり・ひろし)
カリフォルニア工科大学カブリ冠教授・東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(IPMU)主任研究員。  1962年岐阜県生まれ。1986年京都大学大学院修士課程修了,東京大学助手。プリンストン高等研究所研究員,シカゴ大学助教授,京都大学数理解析研究所助教授を経て,1994 年カリフォルニア大学バークレー校教授,2000年カリフォルニア工科大学教授,2007年から東京大学数物連携宇宙研究機構主任研究員を兼務。

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超弦理論