日経サイエンス  2012年5月号

動物の体内コンパス

D. カステルベッキ(サイエンスライター)

 地球は巨大な棒磁石のようになっていて北極にS極,南極にN極がある。だからコンパスが使えるわけだが,コンパスのN極が示す方向「磁北極」は自転軸の北極と少しずれている。放牧されている牛の群れを詳しく調べていたドイツの研究者は,平均すると,牛たちは体を南北方向に合わせていること,それも真北ではなく磁北極を向いていることを突き止めた。

 地磁気に反応する動物は牛のほかチョウやハチ,渡り鳥,ウミガメ,ゾウアザラシやクジラなど多種多様。一部の動物は磁気を帯びた微粒子をコンパス代わりに使っている可能性があるが,量子効果を用いた分子サイズの地磁気センサーを持つものもいるらしい。

 

 

再録:別冊日経サイエンス206「生きもの 驚異の世界」

著者

Davide Castelvecchi

ローマを拠点に活躍するサイエンスライター。SCIENTIFIC AMERICANの寄稿編集者でもある。

原題名

The Compass Within(SCIENTIFIC AMERICAN January 2012)

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