日経サイエンス  2012年4月号

サイエンス・イン・ピクチャー

まだある肥満の危険

C. ゴーマン(SCIENTIFIC AMERICAN編集部)

 体重過多がすぎると心臓病や脳卒中,糖尿病のリスクが高まるというのはいまや常識になったし,肥満(標準体重を20%以上超えている状態。日本肥満学会の基準ではBMIが25以上)が増えていることも周知の事実だ。ある推計によると,2030年に米国の肥満者は現在よりも6500万人増え,心臓病と脳卒中の患者が新たに600万人以上,2型糖尿病患者が新たに800万人生じるという。すでに,おじいさん・おばあさんのほうが子供や孫よりも健康で長生きしている例が数多く見られるようになっている。

 そうした数字ではまだ足りないといわんばかりに,肥満の蔓延がもたらす悪影響がさらに広範にわたることが過去数年の研究で示された。体重過多が心の健康を害し(うつ病とアルツハイマー病を悪化させる),性的な健康を損ない,日常生活の質を悪化させることが確認された。悪影響は高齢者ほど顕著だ。いくつかのタイプのがん(大腸,腎臓,食道がんなど)の25%程度は肥満と運動不足が引き金になっていると専門家は考えている。

 医療情報サイトのTheVisualMD.comが最新の解剖学データに基づいて作成した右の画像が示すように,肥満が人体に及ぼす悪影響は実に様々だ。深刻に受け止めざるをえない。

 

 

再録:別冊日経サイエンス222「食の未来 地中海食からゲノム編集まで」

原題名

Five Hidden Dangers of Obesity(SCIENTIFIC AMERICAN January 2012)

サイト内の関連記事を読む

キーワードをGoogleで検索する

内臓脂肪