日経サイエンス  2012年4月号

スタインマンの最後の闘い 自ら試したがんワクチン

K. ハーモン(SCIENTIFIC AMERICAN編集部)

 昨年のノーベル生理学・医学賞は日本では有力候補の審良静男大阪大学教授が受賞を逃したことが大きく報じられたが,国際的には受賞者の1人,米ロックフェラー大学のR. M. スタインマン博士の死去が受賞発表直後に判明,関心を集めた(例外的に死後の授賞が決まった)。博士が発見した「樹状細胞」はがんやエイズに対するワクチンの多くで中心的役割を果たしている。2007年に膵臓がんと診断された博士は,世界に散らばる数多くの研究者仲間の協力を得て,研究途上にあるそうした新ワクチンを自身に投与してがんと闘った。当初,余命1年程度とみられていたところ4年間持ちこたえ,ノーベル賞発表の日を待ったが,その3日前に息を引き取った。

 

 

再録:別冊日経サイエンス204「先端医療の挑戦 再生医療,感染症,がん,創薬研究」

原題名

The Patient Scientist(SCIENTIFIC AMERICAN January 2012)

サイト内の関連記事を読む

キーワードをGoogleで検索する

樹状細胞免疫応答膵臓がんワクチン臨床試験