日経サイエンス  2012年4月号

Mサイズのブラックホール

J. E. グリーン(プリンストン大学)

 ブラックホールは重い星が爆発して生み出されるが,その質量は最大でも太陽の100倍程度。一方,多くの銀河の中心には太陽の数百万倍から数十億倍の質量のブラックホールがある。前者をSサイズとすれば後者はLサイズだが,宇宙にはLサイズの種となるMサイズがほとんど残っていない。

 熱心な探索にもかかわらず見つかったのは100個程度だ。Mサイズの誕生シナリオには,Sサイズが集まってできたとする説と,巨大ガス雲が星の段階を経ることなく一気にMサイズのブラックホールになったという説がある。宇宙初期,すでにLサイズが存在していたこと,Mサイズが特定タイプの銀河にしかないことは後者の説が有力であることを物語る。

 

※翻訳はブラックホール研究で知られる大阪教育大学の福江純教授。

 

再録:別冊日経サイエンス196「宇宙の誕生と終焉 最新理論でたどる宇宙の一生」

著者

Jenny E. Greene

ハーバード大学における学位研究の一端として,銀河中心に存在する質量の比較的小さなブラックホールの研究を始めた。現在はプリンストン大学の天文学の助教で,銀河構造の進化全般を研究。またニュージャージー刑務所の収監者に代数学を教えている。

原題名

Goldilocks Black Holes(SCIENTIFIC AMERICAN January 2012)

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