
モアイ像で知られる南太平洋の孤島,イースター島で半世紀前に採集された土の中の細菌から,1つの化学物質が得られた。同島を表す現地の言葉「ラパ・ヌイ」にちなんで「ラパマイシン」と名付けられたこの物質は驚くべき力を秘めていることが2009年にわかった。マウスを使った実験で最長寿命(集団中で長生きした上位1割の平均値)が10%以上延びることが判明したからだ。これは加齢学の分野においては「(航空機開発での)音速の壁の突破に匹敵する待望の成果」と著者はいう。その仕組みを明らかにすれば,アルツハイマー病やがん,心不全など加齢に伴う疾患の予防治療に役立ち,さらには私たちの寿命も延ばせる可能性がある。
※監修は本文中に紹介されているスイス・バーゼル大学のN. ホル教授のもとで研究したことがある静岡大学の丑丸敬史教授。
著者
David Stipp
ボストンを基盤とするサイエンスライターで,1990年代後半から加齢学に注目してきた。加齢学に関連する著書「The Youth Pill: Scientists at the Brink of an Anti-Aging Revolution」が2010年に刊行された。老化の科学に関するスティップのブログはwww.davidstipp.com。
関連記事
「120歳時代 健康寿命を延ばす道」,B. ギフォード,2017年1月号。
原題名
A New Path to Longevity(SCIENTIFIC AMERICAN January 2012)
サイト内の関連記事を読む
キーワードをGoogleで検索する
老化/抗老化薬/寿命延長/ラパマイシン/TOR/mTOR/target of rapamysin/カロリー制限/自食作用/メトホルミン/拮抗的多面発現遺伝子