日経サイエンス  2012年3月号

サイエンス・イン・ピクチャー

恐るべき生命の小世界

G. スティックス(SCIENTIFIC AMERICAN編集部)

 顕微鏡写真は,熱心なアマチュアが注目に値する仕事を成し遂げられる数少ない科学分野のひとつだ。肉眼では見えない小さな生物や物体をプロではない人々が撮影し,驚きの画像を生み出してきた。
 この“顕微鏡写真のクラウドソーシング”はスマートフォンやインターネットが発明されるはるか以前から存在し,アマチュアたちの活躍が続いてきた。かつてはレンズの先に現れたものを手書きでスケッチしていたが,後には写真によってリアリティーが大いに高まった。
 この素晴らしい伝統が,以下のページに紹介する作品にも息づいている。毎年恒例の「オリンパス・バイオスケープ・デジタル画像コンペティション」から選りすぐりの応募作品を紹介しよう。同コンペティションは科学者からアマチュアまで幅広い層が参加し,写真撮影のワザを競っている。
 2011年の作品も多彩だ。あるアマチュア顕微鏡写真家がギリシャの山をハイキングしているうちに見つけた題材を撮影した作品もあれば,細胞生物学者がオークションで購入した精巧な顕微鏡を使って撮影した半透明の動物プランクトンの骨格もある。後者は撮影者の本業とは何の関係もない写真だが,プランクトンの骨格が示す驚きの構造美を伝えて余りある作品だ。
 これら小さな隣人たちが持っている生き生きした色彩と複雑な形をつぶさに見られる機会はめったにない。どうぞご鑑賞あれ。

原題名

Dazzling Miniatures(SCIENTIFIC AMERICAN December 2011)

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