日経サイエンス  2012年2月号

遺伝子組み換え蚊でデング熱を撲滅

B. P. トリベディ(サイエンスライター)

 遺伝子操作によって飛べなくした蚊が,すでに何百万匹も野に放たれている。デング熱を媒介するネッタイシマカだ。交尾の機会をなくしてこの蚊を根絶し,デング熱の広がりを抑えるのが狙い。操作した遺伝子はジェームズとアルフェイという2人の分子生物学者によって発見されたが,2人の実用化戦略には大きな違いがあった。法規制の厳しいメキシコに実験施設を作り,遺伝子組み換え蚊の野外試験に向けて現地との対話を続けるジェームズ。ベンチャー企業を立ち上げ,法規制の少ない地域で蚊の放出に踏み切ったアルフェイ。アルフェイの試みは社会的論議を招いたが,彼はなお強気だ。遺伝子組み換え蚊で病気を抑える新たな試みの行方は……。

 

 

再録:別冊日経サイエンス188 「感染症 新たな闘いに向けて」

著者

Bijal P. Trivedi

生物学と環境,医学を専門とするサイエンスライターで,数々の賞を受賞している。米オバリン大学とカリフォルニア大学ロサンゼルス校で分子生物学と生化学を学んだ。

原題名

The Wipeout Gene(SCIENTIFIC AMERICAN November 2011)

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