日経サイエンス  2012年2月号

実験哲学という実験

J. ノーブ(エール大学)

 哲学者といえば,ソクラテスもプラトンも,カント,ヘーゲル,ショーペンハウエルも,思索を通じて真理を追究する沈思黙考型の人物を連想する。しかし21世紀になって,ちょっと変わったタイプが登場してきた。著者をはじめとする「実験哲学者」だ。自分の頭のなかだけで考えるのではなく,人間の考え方が条件によってどう変わるかを認知科学の手法に基づく実験で調べ,人々の考え方が分かれる理由などを探る。なぜ哲学的見解が分かれるのかを,思考を生み出す仕組みそのものを客観的・科学的に調べて明らかにしようという試みだ。「人はいかにして自由意思を信じるようになるのか」といった哲学的大問題を人々がどう考えているかについて,よりよい理解がもたらされるという。

著者

Joshua Knobe

エール大学哲学科の准教授で,実験哲学の創始者のひとり。人々が世界を理解する仕方に,その人の道徳的判断が驚くべきインパクトを与えるという「ノーブ効果」を提唱したことで知られる。

原題名

Thought Experiments(SCIENTIFIC AMERICAN November 2011)

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実験哲学