
火星への有人飛行を実現するための最大の障壁は技術ではない。予算だ。かつては国を挙げて月への一番乗りを目指したアメリカだが,今では宇宙開発も時の政治や経済の状況に大きく左右される。目的地を1カ所に定め,そこへの到達にすべてをかける従来型の戦略では,予算が減ったらたちまち膠着状態に陥る。火星に直接向かうのではなく,月や小惑星,火星の月などを経て一歩ずつ火星に近づいていく“飛び石型”の計画はどうだろうか? 予算の額や技術の進歩に合わせて中間目的地は柔軟に変更できるし,必要な技術も蓄積できる。途中に宇宙機や燃料を置いておけば,火星への旅にかかるコストも低減でき,一石二鳥だ。
著者
Damon Landau / Nathan J. Strange
ランダウはNASAジェット推進研究所の外惑星ミッション・アナリスト。NASAが最近打ち上げた木星探査機ジュノーの軌道設計や,人類が訪れる可能性のある近地球型小惑星の調査などを行っている。
ストレインジは同研究所のミッション設計士。土星系探査カッシーニ・ホイヘンス計画では航法チームのメンバーとして,土星の衛星の重力を使った探査機の軌道設計に関与した。将来の有人ミッションの技術面における青写真を作る仕事をしている。
原題名
This Way to Mars(SCIENTIFIC AMERICAN December 2011)
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火星/イオンエンジン/宇宙発射システム/SLS/宇宙船オリオン/2008EV5