日経サイエンス  2012年2月号

特集 迫る巨大地震

日経サイエンス編集部

 東日本大震災から約10カ月。大津波で壊滅的打撃を受けた三陸沿岸や仙台平野沿岸の復興は緒に就いたばかり。福島第1原子力発電所事故は収束していない。心配なのは,そうした状況下で,次の巨大地震が迫っている可能性があることだ。最も懸念されるのは北海道東部,根室から十勝にかけての沖合で,先の震災と同じような複数の震源域が連動した巨大地震が起きることだ。そうなれば北海道太平洋岸はもちろん,三陸沿岸にもかなりの津波が襲来する可能性がある。
 かねて想定されている東海地震など,いわゆる南海トラフの大地震の対策も見直しが迫られている。東日本を襲った今回の巨大地震の調査研究などから,最悪の場合,想定よりはるかに大きな津波が西日本の太平洋岸を襲う可能性があることがわかった。そうした津波をもたらすような巨大地震が発生すると,日本最大の火山,富士山の活動に影響が及ぶ可能性がある。
 実際,約300年前の江戸時代,それに近い規模の巨大地震,「宝永地震」が起き2万人以上の犠牲者が出たが,その49日後に富士山が大噴火し,江戸を含む関東南部全域に灰が降った。関東では,その4年前にも巨大地震,「元禄地震」が起き,死者が1万人以上に達するなど大きな被害が出た。日本の中枢部を襲う連続巨大地震と富士山の大噴火──私たちは,このような最悪の事態を想定して対策を検討する必要がある。
 東北地方でも今後,火山活動が活発化する恐れがある。今回の巨大地震は平安時代に起きた「貞観地震」との類似性が指摘されているが,貞観地震から2年後に鳥海山が噴火,その44年後に十和田湖がある十和田カルデラが大噴火し,東北地方のほぼ全域が灰にまみれた。過去2000年間に起きた国内の噴火の中では最大だ。貞観地震による地下の変動が,十和田湖の直下にあるマグマだまりを刺激,噴火に至ったとみる専門家は多い。朝鮮半島の付け根にある大火山,白頭山の活動とも関係する可能性がある。

 

浮かび上がるスーパーサイクル

 

最悪のシナリオ

 

続く地下変動

 

大噴火近い? 白頭山

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