日経サイエンス  2012年1月号

化学で迫る10の謎

P. ボール(フリーライター)

 化学というと白衣姿で試験管を振ったり,亀の甲がたくさんつながったような化学構造式を思い浮かべるかもしれない。しかし,改めて考えてみると,生物は化学物質の集まりだし,脳はいわば化学物質で情報をやり取りする天然のコンピューターだ。石油や原子力に代わるエネルギー源として人工光合成やバイオマス利用が期待されているが,そうした技術の根本は一種の化学反応システムだ。

 言い換えれば,生命の起源や脳の仕組みの解明,クリーンエネルギーの開発といった研究テーマはいずれも原子と分子の科学,すなわち化学の問題でもある。多くの人が関心を抱き,人類の未来もかかっている10の謎に化学はどう迫ろうとしているのか紹介する。

著者

Philip Ball

英ブリストル大学で物理学のPh. D.を取得後,20年以上にわたってNatureの 編集者を務めた。作家としての受賞歴もあり,著書に「The Music Instinct: How Music Works and Why We Can’t Do without It」など15冊がある。

原題名

10 Unsolved Mysteries(SCIENTIFIC AMERICAN October 2011)

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