日経サイエンス  2012年1月号

がんワクチン新時代

E. フォン・ホフ(アンティジェン・エクスプレス)

 現在の日本では男性の2人に1人,女性の3人に1人ががんになる。治療法は手術,抗がん剤による化学療法,放射線で病巣をたたく放射線療法の3つしかない。いずれの治療法も長年の改良で,効果はめざましく向上しているが,効なく命を落とす人も多く,新たな治療法が待ち望まれている。そして今,第4の治療法が実用段階を迎えようとしている。「がんワクチン」を投与して患者の免疫系を刺激,がん細胞を攻撃させる免疫療法だ。ここ何十年,様々ながんワクチンが試されてきたが失敗に終わった。しかし,そうした失敗の積み重ねの中から有望株が登場した。米国で前立腺がん治療用のワクチンが承認され,次世代タイプの臨床試験も始まっている。

 

*日本でがんワクチンの開発に取り組む杉山治夫大阪大学教授による,最近の臨床試験の結果報告を併載しました。

 

 

再録:別冊日経サイエンス204「先端医療の挑戦 再生医療,感染症,がん,創薬研究」

著者

Eric von Hofe

バイオ産業でキャリアを積み,新しいがん治療法を研究してきた。がん治療ワクチン開発を手がけるベンチャー,アンティジェン・エクスプレス(マサチューセッツ州ウースター)の社長を務めている。

原題名

A New Ally against Cancer(SCIENTIFIC AMERICAN October 2011)

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