日経サイエンス  2012年1月号

トランシルバニアの恐竜男爵

G. ダイク(サウサンプトン大学)

 ホラー小説でトランシルバニア(ルーマニア西部)の有名人といえば吸血鬼ドラキュラ伯爵だが,古生物学者の間では,約100年前に恐竜男爵の異名を取ったノプシャ男爵の方がよく知られている。近年,恐竜研究の進展で,時代をはるかに先取りしていた男爵の業績に改めてスポットが当たっている。

 第一次大戦前までトランシルバニアはオーストリア=ハンガリー帝国に属し,ノプシャ男爵の領地があった。男爵は少年時代,所領で発見された恐竜化石に関心を持ち,長じては各地を科学調査し,恐竜など化石動物の大家として名をなした。こう紹介すると謹厳な学者のようなイメージを持つかもしれないが,さにあらず。男爵は冒険好きで野心家。第一次大戦時にはスパイとして暗躍した。男色家であることを隠さず,はるか年下の男性秘書が恋人で,科学調査も2人旅だった。

著者

Gareth Dyke

英サウサンプトン大学の古生物学者。恐竜と鳥類の進化史を研究。ブダペストのハンガリー自然史博物館のフォジー(Istvan Fozy)とともに,ノプシャ男爵の生涯に着想を得た小説を執筆中。

原題名

The Dinosaur Baron of Transylvania(SCIENTIFIC AMERICAN October 2011)

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