日経サイエンス  2011年12月号

特集 実在とは何か?

マルチバースは実在するのか?

G. F. R. エリス(ケープタウン大学)

 宇宙は森羅万象を含む全存在で,唯一無二と考えられている。ユニバースはラテン語で「回転して一つになったもの」を意味する。「ユニ」は「一つ」を表す言葉だ。ところが1990年代,宇宙論研究者は「宇宙は私たちが存在する宇宙だけでなく別の宇宙もあり,その数は無数かもしれない」とするマルチバース(多宇宙,並行宇宙;「マルチ」は「多数」を表す言葉)の仮説を提唱し始めた。私たちは別の宇宙に行くことも,観測することも原理的にできない。だとすればマルチバースの実在を問うことができるのだろうか? 「その存在を証明することは科学の範囲を超えている」と著者は主張する。

 

 

再録:別冊日経サイエンス186 「実在とは何か?」

著者

George F. R. Ellis

宇宙論研究者で,南アフリカ共和国にあるケープタウン大学数学科の名誉教授。アインシュタインの一般相対性理論の研究で世界を牽引する研究者の1人であり,ホーキングとともに著名な教科書「The Large Scale Structure of Space-Time」(ケンブリッジ大学出版,1975年)を執筆した。

原題名

Does the Multiverse Really Exist?(SCIENTIFIC AMERICAN August 2011)

サイト内の関連記事を読む

キーワードをGoogleで検索する

マルチバースカオティックインフレーションモデルランドスケープ物理定数