
京都大学の山中伸弥は,生命科学と医療に革命を起こしつつある。1個の受精卵が多様な細胞に分化して手足や骨,皮膚,神経など様々な臓器や組織を作り,個体を形成するのが発生のシナリオだ。山中はこのシナリオを逆転させ,皮膚の細胞から,どんな細胞にも分化できる万能細胞を作り出した。わずかな数の遺伝子を組み込むことで,生命のプログラムを巻き戻せる。それは発生学や生物学の常識を覆す,驚異の発見だった。
iPS細胞は今,実験室で発病の過程を再現するという新たな研究方法を実現し,患者自らの細胞を使って傷んだ臓器や組織を修復する再生医療の扉を開こうとしている。その発見の経緯と,山中自身が歩いてきた道を振り返る。
著者
鹿児島昌樹
日本経済新聞社科学技術部編集委員。医療・バイオをはじめ環境問題,科学史など,科学と社会の関わりを幅広く取材している。
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