
ニューヨークはマンハッタンの街路の地下17mで,1940年代以来となる地下鉄の掘削工事が進んでいる。1972年にいったん着工したもののすぐに中断されていたセカンドアベニュー線(Tライン)だ。二番街の地下,最終的には北のイースト・ハーレム125丁目から南の金融街ハノーバー・スクエアまでを結ぶ。まず96丁目から63丁目までの一部区間が2016年12月に開通する予定で,毎日20万人以上を運ぶことになる。
上り線トンネルが完成し,下り線トンネルの工事が始まった機会を捉え,SCIENTIFIC AMERICANは去る4月に地下の掘削基地を訪ねた。長さ約210mのシールドマシンが実際の掘削を担い,ニューヨークの地下の岩盤を1日に30mのスピードで掘り進んでいる。岩盤は花崗岩と雲母,片麻岩,ざくろ石が混じった「マンハッタン・シスト」と呼ばれる岩だ。「この岩はコンクリートの2倍の硬さだが,シールドマシンはケーキを切るように掘り進んでいく」と工事を担当するスウェーデンの建設大手スカンスカのプロジェクトマネジャー,ジレラティ(Alaeden Jlelaty)はいう。ニューヨーク州都市交通局のとある職員の孫娘にちなんでエイディ(Adi)という愛称がつけられたこのマシンは1360トンの推力を出す。ボーイング747旅客機12機分に相当する推力だ。
掘削された岩の切り屑でゴミになるものはほとんどない。岩屑は毎日トラックでニューヨーク中の建設現場に運ばれ,造園や土地改良に使われている。
原題名
Underground Railroad(SCIENTIFIC AMERICAN July 2011)