日経サイエンス  2011年10月号

哺乳類の祖先を襲った温暖化

L. R. カンプ(米ペンシルベニア州立大学)

 恐竜が闊歩していた中生代は温暖で,南極大陸に植物が茂り恐竜がいたことがわかっている。この温暖期は6500万年前の巨大隕石の落下で終わりを迎えたが,その約1000万年後,哺乳類の天下となった新生代の地球においても非常に温暖な時代があった。北極点に近い島にヤシやシダが生い茂り,ワニが生息していた。その時の地球の気温の上昇ペースは激しく,現在の温暖化をしのぐと考えられていた。ところが近年の詳しい調査研究で,それほど急ではなかったことがわかった。裏返して言えば,現在の温暖化は46億年の地球の歴史上,最も急激なものである可能性が出てきた。多くの生物はこの変化についていけない恐れがある。

 

 

再録:別冊日経サイエンス197「激変する気候」

著者

Lee R. Kump

ペンシルベニア州立大学教授(地球科学)。専門は惑星規模の温暖化。「Dire Predictions: Understanding Global Warming」(DK Adult社、2008年)の共著者。

原題名

The Last Great Global Warming(SCIENTIFIC AMERICAN July 2011)

サイト内の関連記事を読む

キーワードをGoogleで検索する

温暖化PETM暁新世・始新世温暖化極大期二酸化炭素メタンハイドレート永久凍土パンゲア超大陸分裂掘削コアスピッツベルゲン海洋酸性化