日経サイエンス  2011年10月号

眼を生んだ進化

T. D. ラム(オーストラリア国立大学)

樹の高いところの葉を食べるキリンは首が長く,土の中を掘り進むモグラの手は身体の割に大きくて土を効率よく掻く。これらは生息環境に応じて身体が進化したわかりやすい例だが,中には「こんな精巧なものが本当に進化によって生み出されたのだろうか?」と驚くようなものがある。それは私たちの眼だ。眼は軟らかい組織なので,骨と違って化石には残らない。しかし,原始的な動物(ヌタウナギやヤツメウナギ)の眼の構造やヒトの眼の発生プロセスなどを総合的に研究すると,眼がどのように進化してきたのか,その道筋を再現できる。精緻な機構であることには違いないが,仔細に調べると,進化を経たことによる数々の“欠陥”もある。
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再録:別冊日経サイエンス225「人体の不思議」

著者

Trevor D. Lamb

キャンベラにあるオーストラリア国立大学のジョン・カーティン医学研究所・神経科学部ならびにARC視科学研究拠点の研究員。脊椎動物の視細胞(桿体と錐体)について研究している。

原題名

Evolution of the Eye(SCIENTIFIC AMERICAN July 2011)

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