
シュレーディンガーの鳥? シュレーディンガーの猫の間違いじゃないの? 量子論を少しかじった人なら,そんな疑問を持つだろう。実際,ウェブを検索してヒットするのは,この記事の予告くらいだ。おさらいすると,シュレーディンガーの猫とは,ミクロ世界における量子状態の重ね合わせを,マクロ世界における生物(猫)の生死の重ね合わせと結びつけた話だ。常識的に考えれば,猫は生きているか,死んでいるかのどちらかで,どっちつかずの状態などあり得ない。だが,この“常識”を覆すような状況がヨーロッパコマドリという渡り鳥の眼の内部(これも一種のマクロ世界だ)で実現していて,渡りに必要な磁気コンパスのような機能に関係している可能性がある。植物の光合成でも,同じような量子効果が威力を発揮しているかもしれないという。こうした対象を研究する学問「量子生物学」が今,誕生しつつある。
*光合成の量子ダイナミクスを研究している国立ローレンス・バークレー研究所の石崎章仁博士研究員による特別コラムを併載。
著者
Vlatko Vedral
量子もつれを定量化する新しい方法を見いだし,それをマクロな系に応用したことで知られる。英インペリアル・カレッジ・ロンドンの学部と大学院を卒業。2009年から英オックスフォード大学教授とシンガポール国立大学教授の量子もつれ状態にある。物理学以外では,3人の子供と過ごすのと,マーシャルアンプを11まで上げてヤマハのエレクトリック・ギターを弾く時間を楽しんでいる。
原題名
Living in a Quantum World(SCIENTIFIC AMERICAN June 2011)
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