運動機能を支える硬い組織の骨と体内を縦横に巡る免疫細胞
この2つの密接な結びつきを明らかにした骨免疫学の第一人者が
骨を中心とした全身制御系という新たな概念を提唱する
骨といえば,身体を支える硬い組織。一方,免疫はというと,体内をパトロールする免疫細胞たちが担っており,機能はあっても形はない。イメージとしては両極的な骨と免疫系だが,互いに深く影響しているとみなすのが「骨免疫学」だ。骨と免疫系の関連性は以前から漠然とは知られていたが,それを分子レベルで打ち出したのは東京医科歯科大学の高柳広だ。高柳はさらに,骨の細胞の異常が肝臓や腎臓などの臓器不全につながるという新しい疾病観を確立しようとしている。
(文中敬称略)
高柳広(たかやなぎ・ひろし) 1965年東京生まれ。90年に東京大学医学部を卒業し,同大附属病院,東京都老人医療センターなどで臨床医を勤める。1997年に東大の大学院に戻り,免疫のサイトカイン研究の第一人者である谷口維紹教授の研究室に。2001年に博士課程修了。東大助手,科学技術振興事業団さきがけ研究21の領域研究者などを経て,2003年より東京医科歯科大学大学院の特任教授。2005年より分子情報伝達学教授。