日経サイエンス  2011年10月号

フロントランナー 挑む 第9回

素粒子研究を礎に宇宙の“うぶ声”を探る:羽澄昌史

羽澄 昌史

巨大加速器を用いて自然界の物質と反物質の不均衡の謎を解く

その素粒子実験の知識と経験を生かし

宇宙誕生直後に生じた原始重力波の観測に挑む

 

 筑波山を間近に望む高エネルギー加速器研究機構(KEK)は素粒子研究の世界的拠点。物質の根源を探るため,巨大加速器を使って極微の世界を探っている。そんなKEKで今,宇宙を丸ごと相手にする観測装置の開発が進んでいる。ターゲットは宇宙誕生直後のインフレーションで生じたと考えられる原始重力波。いわば宇宙の“うぶ声”で,決定的証拠をとらえたら宇宙論研究のエポックとなる。超ミクロから超マクロへと研究の方向性を180度変えたこのプロジェクトを立ち上げた羽澄昌史。羽澄自身にとっても研究人生の大転換だ。きっかけは6年前,生死の境をさまよう大病のベッドでの思索だった。(文中敬称略)

 

 

 

再録:別冊日経サイエンス196「宇宙の誕生と終焉 最新理論でたどる宇宙の一生」

再録:「フロントランナー 挑戦する科学者」

羽澄昌史(はずみ・まさし)
高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所教授。1964 年愛知県生まれ。93年東京大学大学院理学系研究科博士課程修了,大阪大学助手を経て2001年高エネルギー加速器研究機構助教授,07年から現職。科学研究費新学術領域研究「背景放射で拓く宇宙創成の物理」の領域代表者を務める。

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