
オーストラリアのアカメテリカッコウは,ハシブトセンニョムシクイに托卵してヒナを育てさせる習性があるが,ムシクイの側では托された卵から孵ったヒナを巣から落として対抗している! 地道なフィールド調査で鳥の驚きの行動を明らかにした立教大学の上田恵介教授を,茂木健一郎さんが訪ねた。
托卵された側は,その卵から孵ったヒナを律儀に自分のヒナと思い込んで育てるというのがこれまでの定説だった。だが上田さんは,托卵する側とされる側のヒナが極めてよく似ていることから,「子育ての間に何かが起きている」と直感したという。カッコウには,自分のヒナがムシクイのヒナに似るように進化しなくてはいけない何らかの必然性があった。その答えは,ヒナの子育て期間に潜んでいるはずだと。
驚きの発見に至る発想の経緯は,そのまま進化論の教科書だ。子どもの時から鳥の観察一筋という上田教授と,蝶マニアとしても知られる茂木さんが,生物観察研究の魅力を語り尽くす。
ゲスト:上田恵介(うえだ・けいすけ)立教大学理学部生命理学科動物生態学研究室教授。1950年,大阪府生まれ。大阪府立大学で昆虫学を学び,京都大学農学部昆虫学教室を経て,大阪市立大学理学部博士課程修了。博士論文は鳥の一夫多妻制の研究。日本動物行動学会会長,雑誌「生物科学」編集長。専門は鳥の行動生態学,進化生物学などで,学生とともに,日本とオーストラリアで鳥のフィールド調査に取り組む。
ホスト:茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)はソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。1962年,東京都生まれ。東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了,理学博士。理化学研究所などを経て現職。東京工業大学大学院客員教授。専門は脳科学,認知科学。「クオリア」をキーワードに脳と心の関係を研究している。著書に『脳とクオリア』(日経サイエンス社),『脳と仮想』(新潮社)ほか多数。