日経サイエンス  2012年11月号

特集:利他行動のパラドックス

 昨年3月,福島第1原子力発電所の原子炉がメルトダウンしつつあった時,原子炉を復旧するために再び発電所に入ることを志願した人々がいた。多くの動物と同様,人間は直接の家族や親戚に喜んで手を貸す。しかし,その手を血縁を超えて差し伸べ,まったく見知らぬ他人を明らかな見返りなしに頻繁に助けるのは人間だけだ。

 

 なぜそうするのかは大きな謎だったが,最近,遺伝的な進化と文化的な進化が組み合わさって,利他的社会が生まれたとする仮説が提唱されるようになった。また「ゲーム理論」の手法を用いたシミュレーション研究によると,生物のなかでも人間が特に協力的であるのは「間接互恵」というメカニズムによることがわかってきた。間接互恵は評判に基づいており,他者を助けるという評判がある人を私たちは助けるようになる。

 

無私は最高の戦略   E. フェール(チューリヒ大学)/S.-V. レニンガー(ジャーナリスト)

 

なぜ生物は助け合うか  M. A. ノワック(ハーバード大学)

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