垂直離着陸し、かつ空中に静止(ホバリング)することができるヘリコプタは、ドクターヘリ、消防・防災ヘリ、報道ヘリ等、様々な分野で活用されている。また、最近は空力的デザインの改善等によって高速前進飛行も徐々に可能となってきており、ますます都市間交通の手段として活躍が期待されている。 |
 | | 図1 計算に用いた格子 | 本作品は、CFD(計算流体力学)の手法を用いて、ヘリコプタがホバリング状態から前進飛行に移る際の全機周りの流れ場を計算し、その結果を可視化したものである。流れ場の計算には、移動重合格子法を用いたオイラー・コードを適用した。この方法では、図1に示すように、いくつかの格子を重ね合わせることで、ブレードから放出される翼端渦等の後流を精度良くとらえることに成功している。図1では、ブレード格子、胴体格子、内側背景格子をそれぞれ緑色、黄色、赤色で示しており、ブレードの回転や胴体の運動に伴って、ブレード格子と胴体格子は静止した内側背景格子の中で移動することになる。図には示されていないが、内側背景格子の外には全計算領域を覆うさらに大きな外側背景格子が配置されている。 |
図2と図3はそれぞれ、ホバリングと遷移飛行状態の流れ場の様子を可視化したものである。後流の可視化はブレード後縁から放出された粒子によって行い、ブレード及び胴体の表面圧力はコンター表示で可視化した。粒子を、放出されたブレード・スパン位置によって色分けすることで、可視化の効果を高めている。図2と図3の両図を比較することで、ホバリング時には下方に流されていた後流が、ロータと胴体を前方に傾けて遷移飛行に移ることで後方に流されていく様子がよくわかる。また、図3では粒子の巻き上がりによって翼端渦の形成される様子が明確に可視化されるとともに、粒子が胴体表面に沿って流れる様子もよく示されている。さらに、表面圧力のコンター表示によって、遷移飛行時に胴体が前傾することで胴体前面に圧力の高い部分(オレンジ色)が現れることも見て取れる。  |  |  |  |  | | 図2 ホバリング時の流れ場 | 図3 遷移飛行時の流れ場 | |
| ヘリコプタまわりの流れ場は、そもそも定常飛行状態においてすらロータの回転による非定常流れが生ずるので極めて複雑なものとなるが、遷移飛行においてはさらに機体の運動も重なるのでそのシミュレーションは容易ではなく、世界にも例がない。今後は、本手法がヘリコプタ設計の現場で活用され、より高性能なヘリコプタの開発に役立つことが期待される。 |
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| 講評 |
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| ビジュアリゼーション手法や技術という観点からはさることながら、誰もが興味を持つような複雑な現象をわかりやすく表現している点が特に評価される。最近のグラフィックスを含めたPCの性能向上やユーザーの技能向上からして、こういった視点の作品がますます増えてくることを期待したい。 |