ビジュアル・サイエンス・フェスタ
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日経サイエンス
CVC
 
丸山紗綾香 まるやま・さやか
東北芸術工科大学デザイン工学部
 
 
 昨今の映画を見ると、CG技術の向上の凄まじい勢いに圧倒される。あまりにリアリティ溢れるCGに、いったいどこがCG合成であったのか気づかないこともしばしばだ。それほどまでに現在のCG技術は果てを知ることがない。いまや合成だけでなく、フルCGアニメーションで1時間以上の映画は数多く製作されている。

 しかし、CGは実写の補助的役割ではなく、もっとミニマルな表現をする方向性があるのではないか。私はそれを模索する中、錯視絵というものに出会い、人間の視覚の限界にその表現があるということに行き着いた。

 なかでも、三次元の空間を二次元の平面に表現するトリックアートの類いの絵画にとても興味を持った。人はその絵画を観た時、平面的な絵画にあるはずのない、立体感を見ただろう。そして、平面でありながら存在する立体感と常識の間で奇妙な快感を得る。人間の視覚をもてあそぶ行為は、人間の視覚とその奥にある理性的な知覚との交点で、人が持つ固定観念を大きく揺さぶるのだ。だが、所詮平面の中に仕組まれた立体は存在しない。立体のように見えるだけなのだ。では3DCGで作られた立体はどうなるだろうか。

 この作品では、単純な形をグラフィカルにアニメーションし、そこに2Dと3Dの要素を混ぜ合わせることで生まれる新しい3D表現の形を目指して製作した。2D(平面的)なアニメーションと3D(立体的)なアニメーションがシーンごとにいれかわっていく映像に、観ている側が「今観ているものは2Dなのか3Dなのか」と、目が回るような感覚に陥ってもらいたい。私たちの視力には非常にあらゆるものを素直に見ようとする性質があり、少しぐらいの歪みや狂いをかってに修正して、正常に見ようとしている。見るというより感じるということだろうか。先程まで球体であったものも、見る角度を変えれば円錐に、そして円錐もまた見る角度により三角形に見える。

 このように、私達は時として立体を平面と見てしまう。そして、平面に見えた形が、思いもよらない立体であったという驚きを、観る者に与えたい。視覚の面白さは、現実にはあり得ない現象の再現にあるともいえる。人間だけが持ち得る人間の視覚と、人が裏切ることができない固定観念に正面からとり組み製作した。
講評
本作品は、3次元コンピュータグラフィックスと2次元的なグラフィックデザインを融合した非常にクリエイティブな作品である。錯視の要素を取り入れつつ、 完成度の高い抽象的なアニメーション作品として仕上がっている点が高い評価を得た。