ビジュアル・サイエンス・フェスタ
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日経サイエンス
CVC
 
海老沢靖 えびさわ・やすし
筑波大学
周 輝 しゅう・き
筑波大学 
   
蔡 東生 さい・とうせい
筑波大学
望月茂徳 もちづき・しげのり
筑波大学
   
J.B.Cole
筑波大学
 
 
 
図1
 CGにおける人体の動きの生成には、多くの手間と時間がかかる。そのため、モーションキャプチャの利用や、アニメータの作業を補助するツールが必要とされてきた。

 動作生成の手法としては、周波数解析を用いて特徴的な動きを抽出する手法や、歩行のような周期的な動作を複数用意しそれをブレンドして新しい動作を得るようなツール(Poserの歩行ジェネレーター)などが存在する。また動力学を考慮したものでは、上半身の動きに合わせてバランスを保ちながら足跡を追跡するツール(3D studio MAX のプラグインCharacter studio)や、2足歩行ロボットに人間らしい動きをさせる研究などがある。

 本研究では、図1に示すような、13リンク12自由度のヒューマンフィギュア・モデルを作成する。

 地面から腰までは6自由度対偶となっており、各関節は1自由度のPin Jointモデルである。自由度を減らしているのはモデルを単純化しているためである。図1モデルで、動力学シミュレーションを行う。動力学シミュレーションにはSD/FAST [1]を用いた。SD/FASTでは、Kane's methodおよび4th order Runge-Kutta time integrator を用いている。ヒューマンフィギュアの動作はPD制御によって行う。

 遺伝的アルゴリズム(GA)とは、生物の進化過程をモデルとした解の探索を行うアルゴリズムであり、巡回セールスマン問題、図形配置問題といった組合せ最適化問題に対して幅広く用いられる方法である。GAでは解候補を染色体とモデル化し、染色体の集団に対して大局的検索を行っていくため、他の解法を用いた時に障害となる解空間の増加による解候補の爆発的増加に対しても有効であり、比較的高速に解を発見できるという特徴がある。

 まず、決められた個体数の染色体をランダムに生成し、初期集団とする。その後、それぞれの個体が制約をどれほど満たしているかを求め(適応度)、それに応じて親の選択と交叉を行う。適応度の高い個体がより多くの子孫を残す。この研究ではPD制御のパラメータをそのまま遺伝子型とする実数値表現をとる。上記ヒューマンフィギュア・モデルに適応し、動力学計算とシミュレーションによって、床との衝突により転倒ダメージを決定する。GAで普通定義される適応度とは逆であるがダメージが低い方が適応度が高いものとここでは設定している。

図2 初期集団最良の解(手をつかない) 図3 450世代後の解(手をつく)
 図2、3に胸を押されたときの転倒モーションのシミュレーション結果を示す。図3に示すように手をついて受け身をとる動作が自律的に獲得され、ダメージが激減していることがわかる。図4に人間がどのように手をつくかのアニメーションプロセスを示す。このように、遺伝的アルゴリズムと動力学シミュレーションを用いることで、人間が自然に手をつくプロセスを学習させ、モーションの生成に利用できることが分かる。 前方から胴に打撲
図4 450世代後の解アニメーション
参考文献 [1] Michael G. Hollars, Dan E.Rosenthal, and Michael A. Sherman. SD/FAST Symbolic Dynamics, Inc., 1991
講評
本作品では、遺伝的アルゴリズムを用いて、ヒューマンフィギュアの転倒の仕方が徐々に改善されていくアニメーションを実現している。自立型ヒューマンアニメーションが重要になってくることを考えると、本研究は重要な研究であり、アニメーションはビジュアリゼーションとしてすばらしい。今後、遺伝アルゴリズムによって、いかにアニメーションとしてふさわしい動きを作り上げるかというインターフェイスに関する研究に期待したい。