ビジュアル・サイエンス・フェスタ
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講演プログラム
2003年
2002年
2001年
組織構成
実行委員会
入選作品
2003年
2002年
2001年
日経サイエンス
CVC
 
難波啓一 なんば・けいいち
科学技術振興事業団ERATO難波
プロトニックナノマシンプロジェクト
大阪大学
上坂浩光 こうさか・ひろみつ
有限会社ライブ
 
伊東 整 いとう・せい
有限会社ライブ
 
 
 細菌は宿主の体内、体外によらず粘性媒体中を活発に運動し、温度や栄養分濃度のわずかな勾配を検知して、より良い環境を求めて移動し続ける。その運動器官はべん毛と呼ばれるらせん型の細長い繊維で、体長2ミクロンほどの細菌が直径20ナノメートル程で長さ10数ミクロンにもなるらせん繊維型プロペラを、根元の回転モータにより毎分2万回転ほどの高速で回転し推進力を発生する。モータはその固定子を流れるプロトン流で駆動される。遊泳速度は水中でおよそ毎秒20ミクロン、つまり一秒間に体長の10倍ほどの距離を移動する。自動車の大きさなら時速160kmに対応する。

 モータは細胞膜を貫通する形で固定された直径30ナノメートル程の構造で、回転子や固定子、反転制御装置、摩耗のない軸受けなどからできている。モータの軸の先端に、長さ55ナノメートル程のフックと呼ばれる構造が細胞外に構築されてユニバーサルジョイントの役割を果たし、その先に長いらせん繊維型プロペラが伸びている。曲げにやわらかいフックと比較的堅いらせん繊維型プロペラの間には、機械的特性の異なる軸構造をつなぐ短い連結部が存在する。全ての部品が様々な蛋白質の集合体でできたナノスケールのマシンで、超分子ナノマシンと呼ばれる。

 およそ25種類の蛋白質がそれぞれ数個から数万個、順序よく自己集合して部分構造を作り、べん毛全体は2〜3時間かけて自己構築される。全ての蛋白質は細胞内で合成されるが、その組み込みは常に構築中のべん毛の先端で起こる。まず回転子リング構造が細胞膜を貫通して構築し、それを土台に細胞内に面した側に回転子駆動部とカップ状の回転制御スイッチ複合体ができる。その内側に蛋白質輸送装置が構築され、それがATP加水分解のエネルギーを使いながら軸構造を構成する蛋白質を次々にモータの中心チャネルへ輸送する。常にキャップ蛋白質が先ず輸送されて先端にキャップを構築し、それから軸構造を構成する蛋白質が送られてキャップの直下にらせん状に結合する。モータの軸、その先のフック、さらにその先のらせん繊維型プロペラの伸長にはそれぞれ専用のキャップが存在し、キャップの助けによって自己集合する。X線や電子線による解析により解明されたべん毛各部の分子構造と、遺伝学や生化学による解析の結果明らかにされた構築順序をもとに、べん毛全体の自己構築プロセスをCGアニメーションで現した。
講評
細菌のべん毛は直径20mm、長さ10数μのらせん繊維で、その根元にべん毛を回転させるマイクロマシーンともいえるモーターがついている。べん毛はタンパク質が数個から数万個集合して、自己構築される。この作品は、そのようなナノの世界で起こるできごとを、CGアニメーションで、美しく、わかり易く示したすぐれたものである。