ビジュアル・サイエンス・フェスタ
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講演プログラム
2003年
2002年
2001年
組織構成
実行委員会
入選作品
2003年
2002年
2001年
日経サイエンス
CVC
 
中沢一雄 なかざわ・かずお
国立循環器病センター研究所
難波経豊 なんば・つねとよ
香川県立医療短期大学 臨床検査学科
   
鈴木亨 すずき・とおる
科学技術振興事業団
北村喜文 きたむら・よしふみ
大阪大学大学院 工学研究科
   
稲垣正司 いながき・まさし
科学技術振興事業団
川人光男 かわと・みつお
ATR人間情報通信研究所
   
芦原貴司 あしはら・たかし
滋賀医科大学 医学部第一内科
稲田紘 いなだ・ひろし
東京大学大学院 工学系研究科
   
八尾武憲  やお・たけのり
滋賀医科大学 医学部第一内科
鈴木良次 すずき・りょうじ
金沢工業大学 人間情報システム研究所
   
戸田直 とだ・すなお
東北大学大学院 循環器病態学
杉町勝 すぎまち・まさる
国立循環器病センター研究所
 
 
 バーチャルハート・プロジェクトでは、臨床不整脈を理解・予測・治療することを目標として、基礎研究によって得られたイオンチャネルレベルから臓器形態レベルまでの多階層にわたる知見を統合し、心臓の電気活動を再構成する汎用シミュレーター(バーチャルハート)の開発を行っている。頻拍や細動などの致死性不整脈は心臓突然死の原因の80〜90%を占めるといわれており、そのメカニズムとして、心臓に発生する台風のような渦巻型の興奮波活動(スパイラルリエントリー)が注目されている。スーパーコンピューター上のバーチャルハートにスパイラルリエントリーのダイナミクスを再現し、可視化した。

 計算科学的手法を用いるために、心室筋細胞の電気生理学的特性を表す数学モデルとしてLuo-Rudy(LR)モデルを採用した。LRモデルは哺乳類心室筋のイオンチャネル特性に基づいた、いわゆるHodgkin-Huxley型の8変数の微分方程式系である。バーチャルハートは、LRモデルを立方格子状に結合させた一辺300ユニットの三次元配列において、Viewpoint 社のヒト心臓形状ポリゴンデータを元に、心室の部分だけを切り出した約564万ユニットのボリュームデータとして構成した。したがって、バーチャルハートにおいては、約4500万変数の微分方程式系の数値計算をスーパーコンピューターを用いて行った。一方、計算したデータの可視化のために、三次元グラフィックスライブラリであるOpenGLをC言語から呼び出して利用するビューアーを開発した。このビューアーでは、基本的に電位を高い方から順に赤・黄・緑・青・紺の5色に表示し、心室表面および内部の電位分布を任意の視点から眺めることができる。さらに、心室を任意の断面でスライス、あるいは一部を切り取って表示することなども可能である。

図1 心室頻拍
 LRモデルに含まれるイオンチャネルの特性を変化させることで、一回の期外収縮がきっかけとなってスパイラルリエントリーが発生し、心室頻拍(図1)や心室細動(図2)といった危険な不整脈につながる過程などを再現した。従来、心電図や心表面の多点マッピングデータなどから推測していた心臓の電気的な興奮伝播の様子を、高速大規模計算技術と三次元可視化技術により、きわめて直感的に表現できたと考える。バーチャルハートの最終目標は、ゲノム情報から心臓全体の電気的・機械的活動をコンピューター上に再現することである。バーチャルハートによって、不整脈のみならず心不全などあらゆる心臓病がコンピューター上に忠実に再現されれば、病態の理解や新しい治療法・診断法の開発に利用できると思われる。

図2 心室細動
講評
可視化の応用の代表的分野として医学・医療分野が挙げられる。この作品は、この分野で実績があるバーチャルハート・プロジェクトの成果であり、心臓突然死の主な原因である臨床不整脈のメカニズムを可視化している。専門家でなくても心臓の興奮波活動を理解し易いアニメーションによって再現されているので、医療技術進歩への貢献が期待できよう。