ビジュアル・サイエンス・フェスタ
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入選作品
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日経サイエンス
CVC
 
 
カーネギーメロン大学ロボティクス研究所所長
金出 武雄
 
 
 今年の1月に行われたスーパーボウルで、我々がCBSと共同で開発したアイビジョンというシステムが使われました。これは、現実のシーンのある瞬間の映像を様々な角度から見ることができるシステムです。「マトリックス」という映画に、主人公がパッと飛んだ瞬間、時間が止まって、主人公のまわりをぐるっと一周したように見せるシーンがあります。これと同じことを、アメリカンフットボールの試合で行うわけです。

 映画では、百十台程のカメラが俳優を取り囲み、飛んだ瞬間を一斉に撮影し、それを順番につなげることで、あのような映像が作られます。しかし、俳優の演技する位置があらかじめ決まっている映画と違い、スーパーボウルの場合、広いフィールドのいつどこで何が起きるかわかりません。そこで、スタジアムのまわりに各々雲台に乗せたカメラを30台設置しました。0.01度の精度で雲台をコンピューター制御し、人間のカメラマンが選んだ対象をトラッキングしながら、これらのカメラでその映像を撮り、その出力をつなげるのです。実は、こうしてできた映像は、マトリックス映画の様にただ回転するだけでなく、実際に撮影されたものとは別の回転軸で回転させることもできる技術も開発しました。

 我々の研究所では、バーチャライズド・リアリティー・プロジェクトというものを行っています。バーチャルなものを創り出す時に一番良いモデルはリアルワールドですが、それを精度よく高速で3次元デジタル化するのは難しい。我々は1cmの精度で100m先まで3次元画像が撮れる装置を開発しました。レーザーをミラーで反射させて、上下に70度、水平に全周360度を400万点のデータに40秒でスキャン入力します。これを使えば建物の形をそのままわずか40秒間でコンピューターの中に取り込むことができます。しかし、40秒とはいえ、その間静止していなければなりません。現実の世界は常に動いているので、動いているものに対しては使えないわけです。そこで、動く対象の3次元モデリングする3次元ルームというものを作りました。3次元ルームは、10m四方の部屋に50台のカメラが配置されたもので、その中で行われるイベントを撮影して、すべてのカメラの映像を処理することで、完全な3次元モデルのシークエンスができあがります。これをバーチャライズド・リアリティー、仮想化された現実、と読んでいます。一度取り込んでしまえば、カメラがもともとなかった所からそのイベントを見るなど、あとはどんな加工も可能です。

 この3次元ルームのアイデアをもっと大きな範囲で、例えば、国を丸ごとカメラで撮ることができれば、一ヶ所に居ながらにして国中のことがわかる。あるいは、逆にもっと小さいことに使うのでは、直径2〜3mmのカメラをお腹にたくさん刺して、いわゆる低侵襲手術でまるで完全に開腹したかの様に手術をすることもできるでしょう。このようにコンピューター・ビジョン技術を使って、リアルワールドをデジタルモデルすることができれば、スポーツ観戦はもちろん、我々の経験をもっとふくらませることができるのではないかと思います。