| |  |  |  |  | |  | 映画監督 クマガイコウキ デジタル・フロンティア CGディレクター 毛利陽一 | |  |  | | | | クマガイ 「ぼのぼの」という漫画は、いがらしみきおという漫画家が「まんがクラブ」および「まんがライフ」に1986年から連載している4コママンガで、単行本は21巻、総売上本数850万部を誇るロングセラーです。88年には講談社漫画賞を受賞し、93年には原作者みずからが監督となって映画化された他、95〜96年にかけては、テレビアニメ化もされています。今回の映画化は、単行本20巻発刊記念として話が持ち上がり、それがどんどんふくらんで劇場版の作品になったという経緯です。原作は、森に住む「ぼのぼの」という名前のラッコを中心に、ぬいぐるみのような、かわいらしい動物達が繰り広げる世界を描いています。内容は、日々の日常を淡々と描いたものや、時には人生問題をとりあげたものなど、全体的には奥の深い作品になっていますが、あまり強いストーリーが存在しません。しかし、今回の映画化にあたっては、あえて友情や絆といったテーマを取り上げて、ストレートに感動を与える物語をフル3Dで制作することに決まりました。ストーリーを書くにあたっては、ただ2次元のマンガが3次元になっただけでは面白くないと思い、原作者がこの「ぼのぼの」という作品を書くインスピレーションとなった、森に住む動物達の世界を再現することを目標にし、その狙いは達成されたのではないかと思っています。 |  | | |  | 毛利 制作期間は、テスト映像に数カ月、本製作は13人のプロジェクトチームで、2001年5月から2002年1月にかけて行いました。苦労した点は、絵の統一感を出すこと、タイトなスケジュール調整、そしてデータの管理などです。特にプロジェクトの後半では、スタッフ一同、会社に泊りがけで作業を進めるなどの苦労がありました。また、人数が多くなるとデータのやりとりも頻繁になりますし、長編60分ともなると、データ量も多くなりますので、データを軽くするための工夫もしました。説明すると長くなってしまうので…。 テスト映像は、背景とキャラクターを簡単にモデリングして、どんな絵にしていくかを決めるためのプレゼンテーション用のものです。セルアニメ風のぺたっとした背景にして原作の雰囲気を残したものや、キャラクターをパペット風にしたもの、背景もキャラクターも本格的な3Dにしたものなど、いくつものバージョンをつくり、どんな雰囲気に仕上げるかを検討しました。また、全体を温かみのある雰囲気に仕上げるために、キャラクターには、ふさふさの毛を生やすこともこの段階で決めました。その際、毛を生やした状態で最終的な仕上がりがバランスよくなるよう、サイズをひと回り小さくして調整しています。毛を生やすという技術は、すでに「スチュワート・リトル」や「モンスターズ・インク」などでも見られ、特に目新しいわけではありませんが、ぬいぐるみ的な質感という意味で、少し書き込まれた絵っぽい(背景も含み)日本的なマンガっぽい感じを表現したいと思っていました。 制作については、まず監督から絵コンテをもらい、キャラクターをつくります。そして、監督自身で絵コンテをスキャニングした画像をつないでビデオコンテにします。これは、画像に字幕がついた紙芝居のようなもので、大きな映像の流れを見るものです。このビデオコンテを元に60分のフルCGの仮アニメ(アニマティクス)をつくって、キャラクターと雰囲気、仮のせりふ(ナレーション)、動きをチェックします。今回はスケジュールの関係で、この段階で演出やレイアウトを決め、それぞれの素材を仕上げるという手順で進めました。そのため、リハーサルをして本番を迎える舞台演劇のような緊張感がありました。 実際の作業は、イメージボードを描き、3Dのモデリングを行い、テクスチャーを貼り、キャラクターに表情をつけるなど地味な作業の積み重ねです。マンガは森を舞台にしていますので、キャラクター以外は、背景となる木や家の制作が中心です。例えば、森の中心的な存在である「くももの木」のイメージをまず2Dで描き、監督と木のイメージをつめていきます。その上で、幹だけをモデリングし、そこに葉っぱをつけて仕上げます。木と地面の継ぎ目などが直線的になると、不自然になりやすいので、草や石、きのこなどをその周辺に植えて自然になるよう、後から処理を施しています。ただ、石や草を多用すると映像が煩雑になりやすいので、草の生えているところと生えていないところを明確にわけ、絵として見やすくなるよう心がけました。また、キャラクターそれぞれの家やその周辺を個性的にすることで、比較的シンプルな原作をダイナミックに動かすように工夫しました。また、絵に統一感を持たせるために、すべての場面を晴れの状態でつくり、時間帯や天候といった違いは、後で色み等を調整することで表現しています。 キャラクターの表情は、最初に必要になりそうな表情をピックアップして、まずスケッチ的な絵を描きます。これを3次元に置き換えていきますが、平面を3Dにおきかえると矛盾する点も生じてしまいます。例えば、ぼのぼのの目は正面から見ると横に離れてついていますが、これをそのままモデリングして横から見ると、目が頭の後ろに隠れてしまいます。また、目が大きなキャラクターは、表情によって目や口、鼻のバランスが違うので、見る角度によっては顔が破綻しているように見えたりします。こうした点をなくすために、実際には角度別に顔をつくっておき、シーンによって使い分けました。また、頭の形がぎざぎざになっているキャラクターの場合、モデリングで表現すると形がはっきりしてしまうので、最終的には、頭の形状ではなく、生えている毛がぎざぎざになっているということでうまく処理しましたが、このような経験によって、平面を3Dにする際の難しさを実感できました。 そして最終的に、これらの素材を合成してひとつひとつのシーンをつくっていきます。たとえば夕焼けの中を歩いていくシーンでは、キャラクターだけのもの、その影だけのもの、地面に落ちる影だけのもの、背景となる山だけなどに分けてつくり、それを合成します。このとき、色みを赤っぽくして夕焼けを表現します。天候の変化も全て色みを調整することで表現しました。素材の数はシーンごとにさまざまですが、雨や水、炎シーンでは、特に多くなります。雨や水球がはねる様子などはCGだけで作ると非常に時間がかかるので、実写を取り入れ、時間短縮も図っています。また、同じ素材を使いまわし、合成する要素や色みを変えることで、全く違うシーンを作り出すなどレンダリングのコストを削減する努力もしています。 クマガイ 制作にあたっては、数々の苦労や制約がありましたが、そういう中でも当初の目的であった「ぬいぐるみが森の中で動いているような雰囲気」を持つ、いい作品に仕上がったことに満足しています。 |  | | | |  | |