ビジュアル・サイエンス・フェスタ
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講演プログラム
2003年
2002年
2001年
組織構成
実行委員会
入選作品
2003年
2002年
2001年
日経サイエンス
CVC
 
 
             
コーディネーター
女子美術大学
教授

為ヶ谷 秀一
  パネリスト
財団法人
地球科学技術
総合推進機構
理事長

坂田 俊文
  パネリスト
宝塚造形芸術大学
教授

大村 皓一
  パネリスト
デジタル
ハリウッド株式会社
代表取締役兼学校長

杉山 知之
 
 
為ヶ谷 今日は「ビジュアル・サイエンスの未来」ということで、各パネリストの方にプレゼンテーションをしていただいた後、全員で議論したいと思います。

坂田 私は人工衛星で地球を見るという仕事を長年やっています。1972年の衛星による観測が始まった当時の技術と比べてみると、画像技術がいかに進歩したかがよくわかります。例えば、衛星で撮った画像をメルカトール法で平面の地図に展開すると、赤道を中心にして乾燥帯が広がっているのがはっきりとわかります。シミュレーションによって、地球温暖化による海面上昇で大陸がどれだけ沈むかもわかる。長年に渡るデータの蓄積によって環境や気象の変化もわかる。それとともに、地球の文明というものまでもよくわかるようになりました。私達の仕事は映像から情報を取り出すことです。人工衛星に積まれているセンサーはたくさんの情報を持ってきますが、私達は必要な情報だけを取り出してくるわけです。地球シミュレーターというものが来年の4月から動き出します。これは、スーパーコンピューター1000台分の能力を持っています。観測してきたデータをそこに送り込んで、その上に色々な条件をつけると、今後どういう事が起こるのかを予測できるというもので、これによって更に詳しく地球のことがわかるようになると考えています。

大村 私は長年CGをやっていたのですが、この9年ほどはアニメーションをやっています。物理的現象のアニメーションはスーパーコンピューターと様々な方程式を使って定式化できますが、私が興味を持っているのは生理的現象、つまり人間の動きです。これは、デジタルにサンプリングして、その動きを忠実に再現することでできるはずですが、それではお金がかかります。お金を使わずにやるには、全く別の方法を考えなければなりません。そこで、人間の動きを支配する方程式を探そうと考えました。物理学者・数学者・医者・プロのスポーツコーチなど多彩なメンバーを集めてプロジェクトを組み、動きの中でもまずは野球のピッチングに特化して研究し始めました。骨格や筋肉、神経系の勉強までしたのですがうまくいきませんでした。そこで、ピッチングやピッチングと同種の動きであるゴルフやテニスなどのスウィング動作だけをビデオに集めて、それを徹底的に見るということをしました。メンバー全員で何回見ても進歩がなかったのですが、ある時逆回しのスローモーションで見たら、ピッチングの動きを突然支配するものが見えてきました。胴体と腕と肘という3つの直交する回転軸と筋肉の伸張反射によって、人は150kmもの球を投げることができるのです。このピッチングの原理がわかると、あとは簡単な人体モデルを作って、テレビで録画したものにフィッティングをして、簡単にピッチングのアニメーションができました。一度動きの原理が見えると、あとはどんな動きでもできます。

杉山 私は25年ほど前に、音のビジュアリゼーションということでコンピューターと関わるようになりました。ですから、ずっとバーチャルリアリティをやってきていて、その経験をもとに、ビジュアル・サイエンスの応用は今後の生活において大変な広がりを見せるだろうとずっと思っていました。日本は光ケーブルやセンサー技術、ロボットなどこれからのデジタルライフに重要な要素で良いものを持っています。
 私はこれからのデジタルライフを、オフィス・リビングルーム・オートモービル・アウトドアという4つのシチュエーションで考えています。オフィスはすでに十分デジタル化されていますし、ここはマイクロソフトやオラクルに任せておけば良いと思います。他の3つについて、日本はなかなか良い技術を持っています。リビングルームで使われる大型ディスプレイ。オートモービルのカーナビゲーションシステム。アウトドアの次世代携帯電話。この3つのインフラがすでに消費者に手の届く価格でサービスされている国は他にはありません。ここが将来のビジュアル・サイエンスが産業としてもっと発展していく場になるのではないかと思います。

為ヶ谷 さて、サイエンティフィックな分野では色々な優れた映像が作られているわけですが、そこからいかに読み出すかという力が必要だと思います。そういったリテラシーの問題をどうお考えでしょうか。

坂田 人が得る情報というのは85%が目からです。その他に、聴覚・嗅覚・味覚・触覚とあって五感になります。また、第六感というものがあって、たくさんの情報の中から第六感を働かせて情報を取り出して良いアイディアが出てくることもある。私はそれに加えて第七感というものを信用しています。例えば、ディスカッションをしていると、同じようなことを言っているのに、違和感があることがあります。相手が本当はわかっていないのではないかと感じるのが第七感です。当然、この違和感は解消していかなければなりません。その点で、ビジュアリゼーションというのは共通の場を作ってくれます。大切なことは、難しいことをいかにやさしく人に伝えるかということです。最近はともすれば、その崩し方を間違えていることが多い。そういう点ではビジュアルな情報を送るということは、重大な責任を伴うことだと思っています。

大村 最近のCGはとても良くできているのですが、ターゲットとなっている映像は実写で撮った映像です。ですから、限りなく実写に近いけれども実写にはならないで、妙なリアル感がある。そこで、改めて人間にとって映像とは何かと考えてみると、人間の目は写真で撮ったような映像を見ているわけではありません。景色を見ている時にも、遠くの景色や近くの景色、すぐ足下の景色など複数の視点があって、それが頭の中で総合印象としてビジュアルイメージができているのです。実は、これは昔から画家が用いてきた手法と同じです。画家は写真のようには描きません。自分の感じたように描く。同じように写真を三次元コラージュしてみると、非常に面白い絵ができました。すごく広がりを感じたり、近づいてくるように感じたりする絵ができた。今まで見えていなかったものが見えるということは、その中に隠された文脈に気づくということです。これを逆に利用すると、様々な独立した映像素材を空間的に配置することで、その中に新しい文脈を積極的に作っていくことができると思います。

為ヶ谷 杉山先生は若者達の教育に携わっておられますが、ビジュアリゼーションの世界において、アートとサイエンスは融合していくと思われますか。

杉山 融合させていくためには、もっと新しいことを起こしていかなければいけないと思います。いつの世にも芸術家は新しい技術を使っていて、それによって新しいものが見えて、違う世界観が示されてきました。これだけコンピューターが強力になり、ネットワーク環境が良くなると、人間の世界観も変わってくると思います。日常的に大量の映像を見ていられる環境の中で育った若い人たちが、今までとは違うアートや違う切り口を見せてくれるのではないでしょうか。やはり、アートとサイエンスが拮抗する中に、新しい価値観が見えてくるべきではないかと思います。

為ヶ谷 本日は貴重なご意見をどうもありがとうございました。