日経サイエンス

日経サイエンスは米国の科学雑誌「SCIENTIFIC AMERICAN」の日本版です。

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パネル討論「海洋深層水ビジネスの可能性と地域活性化の夢」

Part.1 海洋深層水との出会い


司会 まず皆さんの深層水との出会い,深層水のどこに注目するか,また仕事上でどのような関わりを持っているのか聞かせて下さい。              

橋本 私は高知県知事になって初めて深層水のことを知りました。そして深層水について色々な話を聴いているうちに大変魅力を感じるようになりました。
 その一つは深層水は地球上を大きく循環している大変ロマンのある資源だということです。しかも低温安定で,富栄養で清浄であるということで,これは必ずものになるだろうと思いました。しかし,そういう水でありながら,なかなかものづくりに結びついていかなかった。
  これは第一に水産関係を中心に据えて取水した水をすべて使ってしまっていたために,量的に他の企業に分水することができないためでしたので,取水管を増やして民間企業の参加を可能にしました。
 次に深層水の科学的な解明が十分でないことが問題だったので,今年から産業技術委員会を設置し今まで縦割りに分かれていたものを統合して研究を進めていくことにしました。
 こうした研究と商品開発,地域おこしの問題などをどのようにコーディネイトしていかれるかが今後の課題だと思っています。                 

 橋本大二郎(はしもと だいじろう)
 高知県知事
  70年慶應義塾大学経済学部卒業。
  72年同大学法学部卒業。日本放送協会入局。
  社会部副部長、科学文化部次長などを経て、91年退局。
  同年、高知県知事に当選、現在2期目をつとめる。
  著書として『破天荒、大二郎がゆく』(講談社)、
  『土佐発 情報維新』(徳間書店)など。



高橋 私は生態学を専門にしています。1977年にカナダから帰国して最初に手掛けたのが湧昇の研究でした。1979年に海洋科学技術センターの中島敏光氏,豊田孝義氏と出会うことで人工湧昇を知り,海洋深層水の多目的な資源性を知りました。
 1986年に科学技術庁の科学技術振興調整費を使って大々的に取り組むことになり,それ以来深層水の仕組みの解明とともに,資源としての利用についても関わるようになりました。
 深層水の一番のポイントは再生循環型であるということです。漁業に代表されるように,人類は再生循環の資源について,その利用限度を認識しながらも,実際には資源を使い尽くしてきました。ですから深層水が再生循環するからと言って安心はしていられません。
 私としては,いかにこの再生循環型と協調してやっていくか,深層水との関わりでどういう21世Iの社会を築いていったらいいのかということを考えていきたいと思っています。                              

大滝 私が深層水と出会ったのはビジネスと研究の両面からでした。
 ジャフコは,技術を持っている未公開企業をサポートして公開までもっていくという仕事をしている会社です。ここ6〜7年でアルカリ・イオン水とか酸性水という言葉をよく聞くようになり,そうした関係の企業へのサポートも多くなりました。その過程で水の性質はいまだによく分かっていないということを知り,産・官・学を挙げて水を研究しようということでウォーター研究会を設立しました。そうしたところへ,高知県の方から深層水の研究に協力してほしいとの要請があったのです。
 ウォーター研究会としては2〜3回高知県を訪問し,どのような研究をしたら良いかといったサポートを行っています。                      

植村 私は3年前に高知の知人から深層水の話を聞きました。健康には深い関心があり,毎朝コップに半分ほどの天然塩水を飲む健康法を続けていたので,最初は飲むものとして海洋深層水に興味を持ちました。
 しかし現地へ行って話を聞くうちに,これは化粧品としても優れた素材であると思うようになりました。現在美容の大きな問題点に,汚染,ストレス,老化が挙げられていますが,実はこの老化とは水分を失った状態のことを指しています。ですから水分をいかにうまく体に取り入れるかは美容の大きなテーマなのです。
 海水と人体の細胞が持っている液体が似ていることはよく知られた事実で,このためフランスではタラソテラピーという海洋療法が盛んです。化粧品の成分の中で最も重要と思われるのは水だと思います。この海洋深層水を逆浸透膜を使って脱塩した深層水は,非常に肌に馴染む最高の素材です。安全性の面からも,深層水は化粧品に適した素材だと思っています。                           

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