基調講演「利用研究の現状と未来」
Part.3 海洋深層水利用の今後の課題

酒匂敏次(さこう としつぐ)
57年東京大学工学部卒業。59年東京大学大学院修了。63年テキサスA&M大学院卒業。日本政府、米国政府やフロリダ、テキサス、ハワイ、オレゴンの諸大学で行政、教育、研究のポストを歴任。日本沿岸域学会理事、海洋科学技術センター評議員、海洋深層水利用研究会会長。
このようにその利用に大きな期待を持たれる深層水であるが,問題がないわけではない。
深層水は無公害,無尽蔵で21世紀以降人類にとって非常に大きな資源となり得るわけだが,実際に汲み上げられる深層水というのは個々の地域単位であり,その海水は地域ごとに成分,性質が異なってくる。従って汲み上げた深層水をどうすれば一番有効に利用することが出来るのかという問題が出てくるわけだが,それを検討しようにも深層水自体の性質に未解明な部分が多く,更なる研究が必要なのだ。
いずれは10万トン,100万トン規模での取水も予想されるわけだが,どれくらいの規模の取水であれば再生循環に影響を与えずに済むのかということもわかっていない。また今後の実用化にあたっては,深層水を多段階にわたって活用していくことが必要である。汲み上げた深層水で,植物プランクトンの生産や魚介類の生産をし,さらにそれを冷却の為に使いまわしたりといったことが,資源の有効利用という面,経済性の向上といった面からも望ましいものと思われる。
深層水の利用は環境問題と切り離して考えることは出来ない。利用した深層水をそのまま沿岸の海に排出することは,沿岸の環境に大きな影響を与えることになる。一度汲み上げた深層水はゼロエミッションを目指し,出来るだけその特性を利用し尽くして,場合よっては表層水と混ぜて戻すなどの配慮が必要である。 こうしたことを考えると,この問題は一自治体,一企業での研究ではなく,産・官・学を挙げての共同事業として取り組むべきものだと思われる。
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