基調講演「利用研究の現状と未来」
Part.2 今日までの海洋深層水の利用

酒匂敏次(さこう としつぐ)
57年東京大学工学部卒業。59年東京大学大学院修了。63年テキサスA&M大学院卒業。日本政府、米国政府やフロリダ、テキサス、ハワイ、オレゴンの諸大学で行政、教育、研究のポストを歴任。日本沿岸域学会理事、海洋科学技術センター評議員、海洋深層水利用研究会会長。
世界の海には深層水が表層へと上がってくる湧昇現象が起っているところがあり,こうした海域は昔から豊かな漁場として知られていた。構造物を設置して人工的に湧昇をおこさせるという利用システムなどもが考えら出されている。
この他深層水を手に入れる方法として,パイプラインやトンネルを使って汲み上げたり,エアリフトで海水のバブルを発生させてその上昇と共に海水を汲み上げるといった方法もある。また同じ汲み上げるにしても,陸上に汲み上げるのか,それとも海上にステーションを作って汲み上げるのかといった問題もある。
実際のプロジェクトとしては1970年代にアメリカが温度差発電のための研究を開始したのが最初である。温度差発電とは,表層の暖かい海水と冷たい深層水の温度差をつかって発電をしようというもので,1920年代にはやくも最初の実験がなされた。しかし実用化を目指して大々的な研究が始まったのは,1970年代のオイル・ショック以降である。アメリカはカリブ海とハワイで実験を開始したが,カリブ海での研究は帆立貝の養殖などに成功したものの,その後あまり発展しなかった。
一方ハワイでは,ハワイ州と連邦政府のエネルギー省が協力して自然エネルギー研究所をつくり,深層水を使った温度差発電の研究を大々的に始めた。それに少し遅れて,ハワイ州は研究所の周辺に研究開発団地を作り,民間企業が深層水を活用して研究開発活動が出来るようにした。ここには現在日米の企業が進出していて,商業的な規模で養殖や薬品の製造などの実験をし,一部はすでに製品として市場に出ている。

海洋深層水を使用した商品
このほかにも汲み上げた深層水でジャイアント・ケルプという昆布の一種を大量に作り,刈り取ったジャイアント・ケルプからメタンガスを発生させて発電しようという研究もなされたが,オイル・ショック以降思ったほどエネルギーの値段が高騰しなかったため,現在は中断されている。
日本では1980年代の後半に,まず最初に高知県が深層水の研究に着手した。これには富山県も参加した。その後科学技術庁の海洋開発プロジェクトとしてアクアマリン計画が発足し,これには高知は陸上型,富山は海上型という分担で研究がなされた。
新らたな計画としては,平成12年4月に沖縄県の久米島に総合的な深層水利用プロジェクトの準備が進められている。ここでは第一に研究開発,次に製品化を目指すエコビジネス,それから観光と結び付けたエコパーク,最後にリゾート化を目指すエコレジデンスという4つの柱を中心に研究が進められる予定である。
そのほかにも全国の自治体で深層水研究に関して検討が進められている。人工湧昇ということでは愛媛県や長崎県がすでに実験を始めている。
こうした深層水の利用は,単に深層水のみを利用するだけでなく,表層水や温泉水と一緒にして使ってみたり,淡水化して使うことも検討されている。また,エネルギーとしての部分に注目して,冷却水や冷房への活用も研究されている。
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