日経サイエンス 

はじめに 別冊210

日経サイエンス編集部

別冊日経サイエンス210『古代文明の輝き』では,古代文明および考古学という大きな括りで16編の記事を収載した。人間の営みを主軸に,人類学や社会科学,建築学,科学技術など多彩な領域にまたがる内容だ。

 

冒頭の「沈没船のお宝を探せ 海洋考古学の新時代」は近年注目されている水中考古学の技術を紹介する。内部を大気圧に保った金属製の「エクソスーツ」や,無人潜水機で海底を自動マッピングする技術は,海洋での調査をより安価で迅速なものに変えた。「2000年の眠りから覚めたギリシャの計算機」では,ギリシャの難破船から引き揚げられた「アンティキテラ」を最新技術で解析。天文現象を予測した精巧な仕組みを読み解く。

 

「最古のピラミッドに隠されていたもう1つの墓」「甦った王妃ネフェルタリ」「古代エジプトの動物園」は,古代文明のなかでも一般に関心が高いエジプト文明に関する記事だ。最古のピラミッドとして知られるジュセル王の階段ピラミッドの西側地域で新たな墓を発見したポーランド考古学チームの活躍,ファラオの墓葬芸術のなかでも美しさを誇るネフェルタリの壁画の保存・修復に力を注ぐ研究者らの挑戦など,過去と現代を結ぶ人々のストーリーが繰り広げられる。

 

続いては中南米を舞台にした記事を取り上げる。「嵐の神の物語 マヤの古代都市ホルムル」は中米グアテマラの古代都市ホルムルの発掘調査を通してマヤ文明を,「血と石の神々 テオティワカンの秘密」はメキシコの古代都市を中心に紀元前2世紀から6世紀まで栄えたテオティワカン文明を探る。

 

再び大西洋を越えて,次に訪れるのは先史時代の最も有名な遺跡の1つ,英国のストーンヘンジだ。その一部は紀元前3000年ごろには造られていたとみられる。最近の調査から近辺での同種のストーンサークルや環状木柱列が見つかり,新たな発見に興味が尽きない(「見えてきたストーンヘンジの物語」)。

 

西洋の王侯貴族をうならせたイスラム教徒らのダマスカス剣とは? 失われた製造技術を原料や化学組成から探り,鍛冶職人の協力を得て復元を成し遂げた著者は,趣味から始まった研究に20年近くを費やした(「幻のダマスカス剣を復元する」)。「トルコの遺跡に見る9000年前の男と女」は,トルコの町チャタルフユック(チャタルヒュユク)を舞台に初期農耕社会における男女の役割を描く。

 

最後は星座の起源と天文学をテーマにした2編。ギリシャ神話と結びついた星座のエピソードはよく知られているが,星座の歴史はギリシャ時代よりもはるかに古い(「星座の起源」)。キトラ古墳や高松塚古墳の天井にも星座が描かれているが,日本には独自のまとまった星座体系はなく,中国起源の星座が伝わったと考えられる。和製星座が設定されたのは観測技術が進んだ江戸時代のことだった(「北斗七星と東洋の星座」)。

 

 

本書は月刊誌「日経サイエンス」に掲載された記事で編纂した。記事中の登場人物や著者の肩書きは特にことわりがない限り初出当時のものとした。

2015年12月
日経サイエンス編集部