ヒトの嗅覚は他の哺乳類よりも退化しているが,それでも約1万種類の匂いをかぎ分けられる。R. アクセルは,匂いレセプターとそれをコードする遺伝子ファミリーを突き止め,2004年のノーベル生理学・医学賞を受賞した(「匂いの分子生物学」)。最後に登場するのは,ちょっと風変わりな生物,「ホシバナモグラの驚異の鼻」だ。その名の通り星形をした大きな鼻は敏感な触覚器で,その機能と重要度は,脳の体性感覚野とみごとに一致している。物理学者ホイーラー(John A. Wheeler)は,「どんな分野でも,一番奇妙なことを探してそれを研究するとよい」と言ったという。感覚の進化の過程を探るうえで,この奇妙な鼻が役に立つかもしれない。