脳とクオリア
なぜ脳に心が生まれるのか

茂木 健一郎 著

1997年4月24日 A5判 27.6cm×20.6cm 325ページ ISBN978-4-532-52057-1

3,200円+税

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脳という物理的世界に,なぜ心という精神世界が宿るのか?
この超難解な問題の突破口がようやく見えてきた。「クオリア(質感)」という概念がポイントになるのだ。
この新しい知のトレンドを若き俊英が初めて世に問う!

茂木 健一郎 著

目次

 

はじめに

 

序章 「心」と「脳」を「クオリア」が結ぶ

世界は、質感(クオリア)に溢れている/脳は、恐ろしく複雑な分子機械である/「クオリア」を味わおう/ニューロンの発火とは、細胞膜を通しての、イオンの流入だ/クオリアは、熱帯雨林の昆虫のように多彩である/ニューロンの結合様式がすべてを決める/「心」と「脳」を「クオリア」が結ぶ/「クオリア」--失われた知恵?/大疑現前/本書の構成について

 

1 認識は「私」の一部である

認識は私の一部である/認識のニューロン原理/認識のニューロン原理は経済的である/ニューロンの発火以外は、何も仮定するな/視覚研究のボトルネック/視覚における結びつけ問題/結びつけ問題の解決法/原点に戻って、そもそも、視覚の枠組みは、なぜ網膜位相保存的なのか?/再び「認識は私の一部である」

 

2 「反応選択性」と「認識におけるマッハの原理」 

認識のメカニズムに迫る実験的手法/「反応選択性」とは?/反応選択性と認識/反応選択性では、認識を説明できない!/認識を説明する原理としての「反応選択性」の欠陥その①/認識を説明する原理としての「反応選択性」の欠陥その②/ニューロンの識別問題/マッハの原理/認識におけるマッハの原理/認識におけるマッハの原理からの結論/認識におけるマッハの原理と反応選択性との関係

 

3 認識の要素

構築的議論を始めよう/「認識におけるマッハの原理」を具体化する/ニューロンは発火している時にだけ存在する/相互作用連結性/相互作用連結性は、システムが成立するための条件である/認識の時空と認識の要素/末端ニューロンから高次野のニューロンに至る一連の発火の連鎖が、認識の要素となる/認識の要素と、興奮性、抑制性結合の役割/相互作用同時性の原理/認識は、非局所的なプロセスである /再び結びつけ問題/この章までの議論は論理的必然である

 

4 相互作用同時性の原理

私たちの心の中の時間/因果性とは?/因果性の要請/相互作用同時性の原理は、因果性から導かれる/世界の外側には、記憶装置はない/私は、私の脳を外部からは観察できない/ニューラル・ネットワークにおける相互作用同時性のパラメータ/意識における時間の流れ/心理的時間の性質/相互作用同時性は、意識における時間の流れが絶対に逃れられない制約条件である/相互作用同時性の原理と相対性理論との関係/ニューラル・ネットワークにおける固有時の性質/今後の展望

 

5 最大の謎「クオリア」 

心脳問題の最大、最終の謎は、ずばりクオリアだ/クオリアの定義/クオリアについて陥りやすい誤解/クオリアの計算論的な意味/「視野の中の位置」もクオリアである/統合された並列性/現在性のクオリア/結びつけ問題とクオリア/クオリアと脳の中の情報処理/認識の要素とクオリア/クオリアの先験的決定の原理/クオリアと「私」という視点/クオリアは、プラトン的世界への道である

 

6 「意識」を定義する

「意識」とは何か?/「意識」のメンバーシップ問題/なぜ、ニューロンの発火が特別なのか?/意識を支える脳幹網様体/システムとしての意識/意識についての三つの仮説/パーコレーション転移/パーコレーション転移と相互作用連結性/ソフトウェアとしての意識/意識的認識に直接寄与するニューロンの範囲/運動系は、抑制性の長距離結合によって特徴づけられる/興奮性、抑制性の結合と、意識の空間的範囲/以上の議論のまとめ

 

7 「理解」するということはどういうことか?

「理解する」ことの意義/理解するとは、どういうことか?/1つの「言葉」の意味は、どのように確定するのか?/E=mc2の「意味」はどこにある?/言葉の「意味」とクオリア/言葉の意味の伝達可能性/「理解」なくして「知性」はない/チューリング・テスト/「中国語の部屋」の議論/コンピュータは、意識を持つか?/「理解」なしでは「チューリング・テスト」に合格できない/「理解」の神経生理的メカニズム/「理解」と創造性

 

8 新しい情報の概念

「情報」と脳の研究/シャノンによる情報の定義/シャノン型情報量の有効性/シャノン型情報の問題点/情報理論は、確率論の一部分である/クオリアを通して世界を見ていること/ダイナミックスに埋め込まれた情報の概念/認識の要素が、情報の単位となる/ツイスターの概念/クオリアの表現/以上の議論のまとめ

 

9 生と死と私

「私」が「私」であること/「私」を「私」にするもの/「私」の意識に寄与するのは、発火しているニューロンのみである/「眠り」の前後で「私」は同じ「私」か?/「睡眠」の前後で、どうして同じ「私」だとわかるのか?/「死」に関するパラドックス/「私」の「コピー」は「私」なのか?/「コピー人間」と視点/「コピー人間」と、「死」の問題/生と死と私

 

10 私は「自由」なのか?

 自由意志という幻想?/自由意志と人間機械論/決定論と非決定論/量子力学と自由意志/量子力学は、アンサンブル・レベルの決定論だ/アンサンブル限定のついた自由意志/有限アンサンブル効果/量子力学の不完全性と、時間の物理の不完全性/認識論的自由意志論/自由意志と、時間の流れの認識/自由意志と、自己・非自己の境界/自由意志と、選択肢の認識/私は、自由なのか?

 

終章 心と脳の関係を求めて

 

参考文献

 

索引

著者 茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)

 ケンブリッジ大学ポストドクトラル・フェロー。東京大学理学部物理学科卒業,理学 博士。理化学研究所を経て,現在ケンブリッジ大学のHorace Barlow研究室に所属( 1997年12月よりソニーコンピュータサイエンス研究所)。専門は生物物理学で,とく に,理論神経科学,生体運動,情報処理の理論の研究を続けている。1962年生まれ。